斎藤博之のがん日誌 第4回 妻の無念を糧に希望に向けて歩む

斎藤博之のがん日誌
第4回 妻の無念を糧に希望に向けて歩む

●HLAの型が合わないとわかってどのようにされましたか?

白血球のHLA型が膵臓がんペプチドワクチンに合わないと宣告されてから、妻は気力も体力も限界を越えてしまい、主治医のもとに戻ることを余儀なくされました。
そして胆管が肥大し、膵臓の腫瘍に押されて胆汁が流れなくなったため、ステントと呼ばれる管を挿入することになりました。しかし、施術に伴う出血のリスクがあるため、主治医からは緩和療法しかないと宣告されました。

●緩和療法しかないと言われたあと奥様とどのように過ごされましたか?

集中治療室から病室へ移ってからは、麻酔で痛みを和らげる処置を行うほかありませんでした。意識のある時はとにかく妻のそばで、ただただ手を握って奇跡を起こしてみせよう!と誓いあい祈り続ける日々でした。

●闘病している中で何が一番の支えになりましたか?

闘病を通して、妻と私の支えになったのは、家族や親族であり、二人の愛娘たちの笑顔と励ましでした。そうした支えがあったからこそ、決してくじけることなく、諦めることなく夫婦で闘い続けることができたのだと感じています。
妻はどんな痛みにも決して弱音を吐くことなく、ただ生き抜くために闘い続けてくれました。残念ながら、妻はがんペプチドワクチン治療を受ける前の昨年5月に逝ってしまいましたが、本当に誇らしい、私にはもったいない自慢の妻です。本当にありがとう!

●闘病を体験されて、現在のがん治療で何が一番問題だと思われますか?

現在のがんの標準治療では、外科治療や放射線治療ができない進行がんに対して、抗がん剤しか使えないという選択の余地のない治療体系になっていることです。そして、抗がん剤が効かないと、緩和療法しかなくなってしまうことです。
3大標準治療では助からないとわかっていながら、臨床研究中の治療法などを試せなかったり、受けさせてはもらえない方針があることは、非人道的としか思えません。人道的な見地から、本人が未承認薬のリスクを引き受けた上で、臨床研究等への参加が認められてもいいのではないでしょうか。
医療先進国であるはずの日本のがん治療がこんなレベルなのかという驚きと、国民の生命を守るはずの国が何をしているんだという憤りが湧いてきます。

●最初からがんペプチドクチン治療を受けられないのはなぜでしょうか?

また、今回体験したことですが、がんペプチドワクチン治療を受けるには、抗がん剤治療の効果がないことが証明されないと治療を受けられないことには大変失望しました。抗がん剤治療などに行き詰まってからでないとペプチドワクチン治療が受けられないと、その段階ではすでに免疫力もかなり低下してしまっている場合が多く、苦しみを長引かせるだけでなく治療効果も低くなると思います。
せめて、抗がん剤治療を受ける前に、がんペプチドワクチン治療を受けられる体制になっていれば、もっと多くの人が余計な苦しみを味わうことなく、命も救われるのではないかと思います。最初から、がんペプチドクチンの臨床研究等に参加できるようになれば、がん難民として苦しむ人も少なくなるはずです。
しかし、現在行われているがんペプチドワクチンの臨床試験や臨床治験のプロトコル★では、3大標準治療で対処できないがん患者しか参加できないのです。これを変えていく必要があります。抗がん剤治療を受けなくとも、最初からがんペプチドワクチン治療を受けられるようにすればいいのです。そのためには、がん患者はもちろんですが、私たち家族が声を上げなければ変わりません。

★臨床試験や臨床治験を実施する医療機関などが遵守しなければならない実施計画書。

●現在はどのようなことをされていますか?

明日、身の廻りの誰かがががんを罹患したとき、私は「治せない難病なんだよ、これが現実だよ、しょうがない」ということは絶対に言いたくありません!
妻の無念を糧に、私たち夫婦が実体験したことを少しでも多くの皆さんに知っていただき、一つでも可能性のある治療法が標準治療として普及し、何時でも誰でも受けられるようにする活動を行っています。
どんな難治がんでも、発見が早ければ助かるのであれば、リスクの高い家族性がんや遺伝がんといった登録制を早急に実現させ、誰もが唾液や腫瘍マーカーだけで検査が受けられるようにしなければなりません。それを待っているようでは、実現できないのではないかと危惧しています。
がん家系ではない、60歳以上の高齢者でなければ罹患しにくい、定期的に検査を受けて早期発見に務めているから自分は大丈夫と思われておられる方々にも是非ともご協力いただいて、本当に必要とされておられる患者やその家族の方々に、CCNの活動が届くように周知していだだけることをお願いしたいです。

●がんは関係ないと思われている人に、一番訴えたいことは?

手厚いがん保険に入っているので先進医療にかかる費用の心配はないと考えている方も、本当に受けたい治療が金銭以外の問題で受けられない厳しい現実を共有していただきたいと思います。そのために私たち遺族は、今後もCCNの活動を通して訴え続け、がんペプチドワクチン療法が一刻も早く標準治療法になるよう支援すると同時に、がんの早期発見に向けた検査や検診を誰もが簡単に受けられるようにしていきたいとい考えています。
これからも体験や経過報告、情報発信をしていきますので、ご支援くださるようよろしくお願いいたします。これまでの拙い文章をお読みいただき、ありがとうございました。
齋藤博之・道子

★本記事に関して、著者である斎藤さんに対する質問やメッセージを募集していますので、コメント欄にご記入ください。また、本会では標準治療に行き詰まった患者さんやご家族の方、副作用の少ないがん治療を求めている方々のネットワークをつくりたいと考えています。趣旨に賛同される方はinfo@ccpvc.orgにご連絡をください。

齋藤博之のがん日誌 第3回 がんペプチドワクチンに巡り会う

齋藤博之のがん日誌
第3回 がんペプチドワクチンに巡り会う

●がんペプチドワクチンに巡り会った時にはどんな思いでしたか?

第4の標準治療というキーワードに引かれて、市民のためのがんペプチドワクチンの会(CCN)が紹介しているがんペプチドワクチンに巡り合ったときは、「これなら妻はきっと救われる!」と感じました。なぜなら、私たち夫婦には、がんペプチドワクチンは他の免疫療法と明らかに違うと思われたからです。
それは、がんペプチドワクチンの一刻も早い製薬化を目指している、CCNが目指すものや志が、他の免疫療法やそれらを支援する団体とは違うと思ったからに他なりません。

●がんペプチドワクチンに希望を見出した最大のポイントは?

CCNが進めているがんペプチドワクチンは他の免疫療法のような自由診療ではなく、第4の標準治療を目指す活動であることでした。そして、「エビデンス」(治療効果の科学的根拠)を求める治療法であることが、私たち夫婦でも理解できたからです。そのとき、がんペプチドワクチンの治験★があることも知りました。

★薬の安全性を評価する最終ステージ。薬は培養細胞や動物でさまざまなテストを繰り返し有効性の確認と安全性の評価を行った後、最後にヒトに使ってみて本当に安全で有効なのかを調べる。それを治験という。

http://www.ccpvc.org/peptide1.html
●がんペプチドワクチン療法を実施している機関をどのように探しましたか? 主治医からの紹介はなかったのですか?

膵臓がんがわって以来抗がん剤治療を受けていました。その間、主治医には私たちが調べたありとあらゆる治療法を印刷して渡していましたが、がんペプチドワクチンの治験のことは教えていただけませんでした。
CCNでがんペプチドワクチンに巡り会った時から、妻と必死に治療先を探した結果、地元新潟県内の県立がんセンターでの膵がんペプチドワクチンの治験にたどり着きました(当時、CCNではがんペプチドワクチンの臨床試験を開始する前だった)。
早速電話で問い合わせると、治験担当者の方から連絡があり、主治医を通して治験に申し込むことができました。ただ、治験に参加するには、治療している抗がん剤治療の効き目が見られないという医師の診断書が第一の条件でしたが、主治医からは抗がん剤治療中に、そのような情報も得られませんでした。

●治験にはプラセボ(偽薬)がありますが、どのように思いましたか?

治験を調べた段階で、初めて「プラセボ」という偽薬が3分の1の確率で混ざっていることを知りました。それでも他に信頼できる治療法がない以上、治療を受けたいと思いました。また、がんペプチドワクチンの副作用が少ないということを知っていたこともあります。
私たち夫婦の意思は固く、結果如何ではなくすぐにでもがんペプチドワクチンを接種してもらえるように、主治医に懇願し続けました。しかし、治験に参加するためには、「現在の標準治療の効き目が見られないとの医師からの診断書」が必要との条件があり、抗がん剤治療を途中で止めることは私たち夫婦にはできませんでしたし、させてもらえませんでした。
最終的に治験に参加することになったのですが、そのときには抗がん剤による副作用と腫瘍拡大などの進行により妻の体力は衰えていました。それでも「現在の標準治療の効き目なし」という治験の参加条件をクリアしたにもかかわらず、今度は血液検査において妻のHLAの型が治験の対象ではないことが判明したため治験に参加することはできませんでした。

●治験に参加できないとわかって、どのようにされましたか?

また絶望となりました。妻は体力・気力とも一気に衰えてしまい、とうとう救急で搬送されるまで、身体は衰退しており、それからの1ヶ月は入院を余儀なくされてしまいました。
その間も、私たちはともに祈り続け、CCNにも一日でも早く妻のHLA型にあう、がんペプチドワクチンの臨床試験を開始して欲しいと、一日も早く妻に接種できる環境をと懇願し訴え続けていました。
主治医のほうからは緩和療法しかないと、私たち家族はそのことを受け止めざるを得ない状況でした。

●「標準治療の効果なし」という診断書がないと、がんペプチドワクチンの治療を受けられないということについてどう思われますか?

非人道的な感覚しかありません。ガイドラインを含めて患者、またその家族の意思(治療を受けたい、受けたくない)をもっと考慮して改定してもらわねば今後の方々もきっと躊躇し後悔すると思います。

本記事に関して、著者である斎藤さんに対する質問やメッセージも募集していますので、コメント欄にご記入ください。また、本会では標準治療に行き詰まった患者さんやご家族の方、副作用の少ないがん治療を求めている方々のネットワークをつくりたいと考えています。趣旨に賛同される方はinfo@ccpvc.orgにご連絡をください。