「市民支援型寄付講座」によるがんペプチドワクチン臨床研究の成果

当会の1年半にわたる1,500万円の寄付によって得られた成果、さらには今後の臨床研究等について、和歌山医大消化器第2外科がんペプチドワクチン治療学講座担当の先生方とのQ&A形式で取りまとめました。

がんペプチドワクチン臨床研究について

Q1
“日本初”の市民支援による寄付講座のがんペプチドワクチン臨床研究のスタートはいつですか? また研究期間は何年ですか?
A1
臨床研究は、寄付講座の開設と同時に2013年9月より開始しました。研究期間としては1年6ヵ月の研究期間となります。その後、寄付講座の意志にて研究自体は継続しています。

Q2
当会は市民支援型の臨床研究を行うに際し、最難治がんである膵臓がんと、治療も大変で予後も決して良くない食道がんに取り組もうと考えましたが、先生方がこれらのがんに取り組まれた理由は何でしょうか?
A2
我々は消化器外科医として日々がん患者さんの治療にあたっています。がんに対する治療法は日々進歩していますが、まだまだより良い治療を必要とする患者さんはたくさんいます。なかでも、膵臓がん、食道がんは手強いがんで、治療の選択肢も多くありません。その点で市民のためのがんペプチドワクチンの会の皆さんの志と一致しています。
そこで、これまでの基礎研究および臨床研究を通してこれらのがんに対する新しい治療薬、がんペプチドワクチン療法の開発を行ってきました。また、新しく寄付講座による臨床研究を立ち上げるにあたっても、難治がんの患者さんにより良い治療薬を届けられるようにするための研究を行いたいと考え、膵臓がんと食道がんを選びました。

Q3
臨床研究に参加された方の年齢・性別やがんのステージをお知らせください。
A3
今回の臨床研究は手術療法ができない患者さんや標準的な治療法が効かなかった患者さんを対象としていますので、臨床研究に参加される方のステージは4期になります。
膵臓がんの臨床試験は、これまで13人の方が参加されています。年齢は40代から70代後半まで幅広く、女性が約6割です。食道がんの臨床試験は25人の方が参加されています。こちらも年齢は40代から70代後半まで幅広いですが、性別は男性が9割です。これは、食道がんは男性が罹患することが多いためと考えられます。

Q4
臨床研究への参加基準は何でしょうか?
A4
膵臓がんは、腫瘍が大きいことや転移があることなどにより手術治療を受けることができない患者さんが対象になります。食道がんは、標準的な抗がん剤などの治療が効かなかったり副作用で継続できない患者さんが対象になります。がんペプチドワクチンの安全性や効果を検証するための研究として治療しますので、その他にも細かい基準はありますが、今回の研究では、一般的な臨床研究では参加できない基準の患者さんでも幅広く参加してもらいやすい基準になっています。
それは、今回の研究が市民の皆様の御支援で行う研究であることから、より多くの患者さんに参加してもらうことに意義があるという趣旨と、我々研究者としては、様々な患者さんのデータを集積することでがんペプチドワクチン治療の裾野を広げていく研究を行うという趣旨によります。
たとえば、一般的ながんペプチドワクチンの臨床研究はHLAのタイプがA24という型の患者さんのみを対象とすることが多いのですが、これでは日本人の60%の方しか参加できないことになります。われわれは、A24型に加えてA02型の方でも研究に参加できるように準備しましたので、日本人の80%以上の方が研究に参加頂けるようになりました。

Q5
どんな治療を行ったのでしょうか?
A5
膵臓がんは、先述のように、腫瘍が大きいことや転移があることなどにより手術治療を受けることができない患者さんを対象に治療しました。このような患者さんに対しては、抗がん剤治療を行うことが標準的な治療になります。臨床研究では、この抗がん剤治療にがんペプチドワクチンを併用する治療を行いました。具体的には、Gemcitabineという膵臓がんに対する世界標準の治療を行う際にがんペプチドワクチンを併用投与し、その安全性と有効性を検証しています。
食道がんは、標準的な抗がん剤などの治療が効かなかったり副作用で継続できない患者さんを対象にしましたので、他に治療法がありません。そこで、食道がんに対するがんペプチドワクチンを毎週投与し、その安全性と有効性を検証しています。

がんペプチドワクチン臨床研究の中間報告

Q6
この1年6カ月の臨床研究でどんな成果がありましたか?
A6
この研究は3年間で膵臓がん40人、食道がん40人の患者さんにそれぞれがんペプチドワクチンを投与することでの安全性および治療効果や免疫学的反応を検討することを目的として開始されました。また、治療中の患者さんの生活の質についても調査させていただいております。
これまでに約半分の患者さんに参加いただくことができましたので、研究が順調に進められていることが一番の成果です。中には、ワクチンの投与により腫瘍の進行が抑制されたと考えられる患者さんもいますが、この研究を最後まで遂行することでがんペプチドワクチンの創薬に向けた有用なデータをお示しすることが市民の皆様の支援にお応えすることになると考えています。

Q7
どんな副作用がありましたか?
A7
この研究は現在も継続中であります。臨床研究の倫理指針から研究の途中で研究データの詳細を公表することはできません。しかし、がんペプチドワクチン療法は一般に副作用が非常に少ない治療です。この研究においてもペプチドワクチンとの因果関係が否定できない副作用はほとんど認めておりません。ただし、ワクチンの投与部位には免疫反応に由来する皮膚反応(発赤・びらん・潰瘍など)が生じます。

Q8
この間の臨床研究を踏まえて、がんペプチドワクチン治療にどんな期待が持てますか?
A8
すべての患者さんとは言いませんが、「確かにがんペプチドワクチンが効果を発揮する患者さんがいる」という手ごたえを感じています。また、がんペプチドワクチンは副作用が少ないですから、患者さんの負担が少なく治療中の生活の質が保たれることが期待されます。
がんペプチドワクチン治療は、近年、世界的に研究開発が進められており、新規のがん治療法として確立されることが最も期待されている治療法の一つです。繰り返しになりますが、今後この研究を遂行することで、どの様な患者さんにがんペプチドワクチンが良く効くのか、ということも含め、がんペプチドワクチンの創薬に向けた有用なデータを明らかにし、一刻も早くペプチドワクチンを治療薬として市民の皆様にお届けすることが、皆様の支援にお応えすることになると考えています。

がんペプチドワクチン臨床研究継続と今後の展開

Q9
寄付講座は休止になりましたが、研究は継続されるのですか? また、市民による寄付講座の意義はなんでしょうか?
A9
和歌山県立医科大学では現在も積極的にがんペプチドワクチン療法の開発研究を行っており、“日本初”の市民支援の寄付講座が休止になっても、今までの膵臓がんと食道がんのがんプチドワクチン臨床研究は継続されます。
臨床研究が“日本初”の市民支援による寄付講座開設に伴って設置された「がんペプチドワクチン治療学講座」により行われることは、非常に大きな意義があります。それは、新しい治療薬の開発において、患者さんの声を無視した開発では意味がないこと、そして今回の市民支援の寄付講座のように患者さんとともに目標に向かって研究を進めていくことは、我々研究者の大きな精神的支えになるからです。そして何より、市民の皆様の声やサポートが大きくなればなるほど、行政や製薬会社も創薬を迅速に進めざるを得なくなることが期待できるからです。
今回の市民支援の寄付講座開設と、それに伴って臨床研究が開始されたことは、市民の皆様の力を合わせることで、それが大きな力となった結果だと思います。従来の寄付講座は、企業や自治体の寄付が一般的ですが、市民の寄付による寄付講座は他にありません。研究とは本来、世の中に還元できる成果を出すために行うものでありますから、市民の皆様とともに研究を進めて新しい治療薬の開発を目指すこの寄付講座の理念は素晴らしいものであると思います。寄付講座は現在休止となりましたが、われわれはその意志を貫き、引き続き市民の皆様のご支援のもとで研究を継続しています。

Q10
市民支援の寄付講座および寄付講座による臨床研究を継続するとどんなことが期待されますか?
A10
研究が中止してしまえば、これまでの臨床研究に御協力頂いた患者さんのデータを世の中に還元することができません。がんペプチドワクチンの創薬に向けた有用なデータを明らかにするためには、この臨床研究を継続完遂する必要があります。
これまでわが国で展開されてきたがんペプチドワクチン臨床試験の枠組みでは、ヒト白血球型抗原(HLA)の型の不一致や試験の適格基準を満たさないなどの理由で治療を提供できない患者さんが数多くおられました。そこで、和歌山県立医科大学外科学第2教室にがんペプチドワクチン療法の研究開発をさらに加速発展させるための基礎研究/臨床研究を展開する、“全国初”のがん患者団体寄付による「がんペプチドワクチン治療学講座」が開講された訳です。
当講座では和歌山県立医科大学のみならず全国施設を含めたがんペプチドワクチンに関する臨床試験を展開し、その研究成果を国内外に発信することで全国のがん治療の質を向上させるとともに、新規がん治療法を開発することで患者さんの治療選択肢を増やすことを目的とします。さらに、がんペプチドワクチン治療に取り組むことによって、標準療法では対応できないがん患者さんに希望の火を灯していく所存です。

Q11
今後のがんペプチドワクチン臨床研究の展開は?
A11
がんが進行し現在の標準療法では治療法がない、と宣告された多くの患者さんたちは、新規治療法の開発を待望しています。しかし、新薬の開発には規制も多く、がんペプチドワクチン治療薬の開発研究をオールジャパン体制で迅速に進めることが、国際的な見地からも患者さんが待望する治療法の早期実現の見地からも必須の課題であります。また、多様な患者さんにより幅広く治療を提供できるように裾野を広げる研究の展開が求められます。
我々は、市民の皆様の支援により開始したこの臨床研究を遂行することで、がんペプチドワクチン創薬に向けた有用なデータを集積します。この臨床試験は、和歌山県立医科大学のみならず全国施設を含めた臨床試験に展開されております。

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Q12
市民のためのがんペプチドワクチン会員およびがん患者や家族へのメッセージをお願いします。
A12
ご支援ありがとうございます。我々は、皆様のご支援で開始した臨床研究はもちろん、その他の治験・研究も含めた成果を国内外に発信することで全国のがん治療の質を向上させるとともに、がんペプチドワクチンという新規がん治療法を開発することで患者さんの治療選択肢を増やすことを目的に開発を進めます。今後ともご支援をお願い申し上げます。

寄付講座報告0729